プロジェクト終了にあたって


平素ご協力を賜っているかたのみならず、多くの方々、受講生のご協力によりAMSEAは当初予定通りの3年間のプロジェクトを終えることができました。心よりみなさまにお礼申し上げます。AMSEAの成果は今後様々な形で、さまざまな人たちによって結晶化されていくものと深く信じております。


プロジェクト終了に当たって、一点ご説明させていただきたく思います。アラフドアートアニュアル2014における問題にについて、2019年9月に現代美術家のユミソン氏からAMSEAスタッフの北田暁大、神野真吾さん、井上文雄さんを告発する文章がインターネット上で公開されました。本件は、今のところ、
ユミソン氏からの告発①https://note.mu/yumisong/n/ndbc953bd5add
北田による応答https://note.mu/gyodaikitada/n/nd70231002478
神野さんによる応答https://www.facebook.com/photo.php?fbid=2871721652855828&set=a.256124567748896&type=1&theater
井上さんによる応答https://docs.google.com/document/d/1IznDBQef7Ff_JxqsaocaBCDJ7_hADuAOvq30Bq-ga3E
ユミソン氏からの告発②https://note.mu/yumisong/n/na9b03fba1756
といった形で展開しています。
本件については、被告発側である三人を中心に議論を積み重ねてきてまいりました。三人とも事実関係、事象解釈について、ユミソン氏と大きな齟齬を感じており、対応についてAMSEAで一元化するのではなく、それそれが、それぞれの責任において、誠実かつ自律的に対応・応答していくことを確認いたしました。たとえば、私の場合には、告発を受けた後、ジェンダー論やハラスメントの専門家等いろいろな方に相談しながら、かれらの意見を傾聴しつつ、最終的にはかれらの懸念を振り切る形で、noteに書いたような方法を選択しました。具体的には、
①リスク対策ではない真の意味での応答責任を果たすために、お二人のお力を借りながら、そして関係組織に事実関係の照会や情報開示を求めながら、徹底して、エビデンスに基づく事実の時系列的調査を行うこと、
②そしてその調査をもとに、それと並行して、瑕疵や自らの問題性を明確な文脈づけ、理由とともに確定すること、
③そのことを報告書にまとめ、しかるべき第三者の判断を仰ぎ、
④第三者の判断を三人で熟慮したうえで社会的に何らかの形で説明責任を果たすこと、
こうした方向性です。
もちろんこれが唯一の「応答」様式ではありませんし、ご批判があることも承知しております。しかし熟慮の末、私は「平謝り」(リスク対処)ではない応答の様式を模索し、事実関係の認識の齟齬については徹底的に明らかにしていくことが応答責任を果たすことであると考えるに至り、作業を進めております。
「唯一の応答様式」ではないがゆえに、神野さん、井上さんが自律した形で選択される応答のあり方については、それを尊重したいと思っております。AMSEAとしての統一的対応というよりは、個別の責任と信念と熟考のなかから、応答様式は選択されるべき(それこそが真の意味で誠実な応答である)と考えます。


こうした事情について、AMSEA受講生は十分な説明を受けることなく、一部には不安を抱えたまま受講されていたかたもいました。受講生の有志の方々の提案に応える形で、2020年2月17日、21日の2回に渡って、受講生との意見交換会を開催いたしました。
このような意見交換あるいは説明の場は、本来私たちAMSEAスタッフの側で提案すべきものでした。とりわけ、実際にアーティスト等に接する機会を持つ受講生のみなさんのことを考えるならば、「AMSEAの一員」としてアートのフィールドで本件について見解が問われることが少なからずあること、このことについての思慮が十分に足りず、みなさんを困難な立場に置いてしまいました。この点について、深く反省しております。
教育提供の場として、まずは、自らの行動の指針を、識者の話をうかがいながら進めていく、という思いが、かえって、受講生の皆さん、そしてAMSEAに協力してくださったみなさまのお立場への想像力を曇らせてしまい、大きな不信感を生んでしまったことを心より反省しております。
受講生がこのような困難な立場に置かれてしまったこと、強い意志をもって意見交換会の場の設定を提案し、意見を交わし、AMSEAについて反省的に考える機会を作ってくれたこと等を、広くみなさまにお伝えしたく思います。説明不足という私たちの瑕疵に対して、受講生のみなさんは決然とした形で対応してくれました。かれらは「共犯者」なではなく、もっとも誠実かつ内在的な「批判者」です。AMSEAに在籍したこと自体がかれらの不利益にならないことを強く願っております。


AMSEAが目指した「社会的なもの」とアートとの結節が、より十全とした形で表現・実践されることを引き続き目指しつつ、プログラムの(正負の)成果をしっかりと検証してまいりたいと思います。
最後にあらためまして、AMSEAの運営にさいして、受講生、講師の先生方をはじめさまざまなかたに協力をいただいたこと深く感謝申し上げます。


AMSEA代表 北田暁大




AMSEA2019受講生有志ウェブページ
https://sea2019volunteer.water.blog/