AMSEA2019|AMSEA上映会|アントン・ヴィドクル『ロシア宇宙主義:三部作』

*本イベントは、受講生に限らず、ご参加いただけます。


AMSEA上映会|アントン・ヴィドクル『ロシア宇宙主義:三部作』

ロシア宇宙主義は、司書であったニコライ・フョードロフ(1829-1903)によって提唱されました。彼はテクノロジーの最終目的としては、共同事業として、全人類が死を克服し、さらには死者を復活させるべきであると考えました。啓蒙主義や東洋哲学、ロシア正教の発想を組み合わせ、マルクス主義とも結びついたこのユートピア的な哲学は、1920年代後半にスターリン主義によって地下に追いやられるまで、幅広い思想家や政治家など知識人に影響を与え、ロシア革命後の新たな社会を想起する抽象記号や新しい工業的素材などを扱ったシュプレマティスムやロシア構成主義の芸術家や建築家を触発しました。また、不死に満ちた世界へと解き放つために、宇宙は開拓されるべきであるというフョードロフの信念は、彼の元教え子のコンスタンティン・ツィオルコフスキー(1857-1935)によってソビエトの宇宙開発へと受け継がれていきました。
現代アーティストのアントン・ヴィドクル氏による《ロシア宇宙主義:三部作》は、ニコライ・フョードロフのほか、哲学者や詩人の著作から引用し、エッセイ、ドキュメンタリー、パフォーマンスで構成され、シベリア、カザフスタン、白海、モスクワと、ソビエト時代の芸術、建築、工学の遺跡におけるロシア宇宙主義の影響の痕跡を探求し、ロシア宇宙主義の20世紀における影響を検証しながら、現在との関連性を提示します。個人的な父祖の追憶から、「飢餓、病気、暴力、死、貧困、不平等のない新しい現実を構築するため(共産主義のように)」ロシア宇宙主義の基盤を探る、第1部「これが宇宙である」(2014)にはじまり、太陽放射を心理学や社会学、政治と結びつけた生物物理学者アレクサンドル・チジェフスキー(1897-964)の太陽宇宙論から、政治運動や革命と太陽の活動の関係を探る、第2部「共産主義革命は太陽が原因だった」(2015)。そして第3部「全人類に不死と復活を!」(2017)では、宇宙主義の中心的な考えである復活と、死者との交わりの場所として博物館を舞台に進行していきます。哲学者ニコライ・フョードロフの『共同事業の哲学』は1943年に日本語に翻訳されており、アントン・ヴィドクル氏は、本上映作品《ロシア宇宙主義:三部作》を発表後、ウクライナのアナキスト、アレクサンドル・スヴャトゴル(1886-1937)による1922年の生宇宙主義のマニフェストに基づいた新作《宇宙市民》(2019、デジタル、シングルチャンネル、31分、日本語・英語字幕)を東京で撮影し、2019年4月にImages Festival(カナダ・トロント)、Art of the Real 2019(ニューヨーク・アメリカ)にてプレミアム上映し、さらなるつながりを持ち続けています。
本上映会では、《ロシア宇宙主義:三部作》上映後に、乗松亨平氏(近代ロシア文学・思想/東京大学准教授)を招いて「ロシア宇宙主義」と、その社会的影響や背景についてのレクチャーを行います。

参照:
Anastasia Gacheva, Arseny Zhilyaev, and Anton Vidokle
Timeline of Russian Cosmism
https://www.e-flux.com/journal/88/176936/timeline-of-russian-cosmism/

Cosmism on Film: Anton Vidokle in Conversation with Kyohei Norimatsu
https://conversations.e-flux.com/t/cosmism-on-film-anton-vidokle-in-conversation-with-kyohei-norimatsu/7800

美術手帖 INTERVIEW 『なぜいま「ロシア宇宙主義」か? 「e-flux」創始者アントン・ヴィドクルに聞く』聞き手・訳=乗松亨平
https://bijutsutecho.com/magazine/interview/11265



日程|2019年6月8日(土)
時間|開場14:30-/上映 15:00-/レクチャー16:45-
会場|東京大学本郷キャンパス 情報学環オープンスタジオ(〒113-8654 東京都文京区本郷7丁目3−1)
アクセス|https://openstudio-utokyo.com/access/
入場無料
定員|50名
申し込み|https://forms.gle/WtXyHKCit54JwPpH9


上映作品|
アントン・ヴィドクル《ロシア宇宙主義:三部作》(2014-2017/シングルチャンネル/96分/ロシア語、日本語・英語字幕)
第1部「これが宇宙である」(2014)
第2部「共産主義革命は太陽が原因だった」(2015)
第3部「全人類に不死と復活を!」(2017)


アントン・ヴィドクル/Anton Vidokle
1965年モスクワ生まれ。拠点はニューヨークとベルリン。e-fluxジャーナルの創設者であり、「マーサ・ロスラー・ライブラリー」(2005-06)、「ユナイテッドネイションズプラザ」(2006-07)などのプロジェクトを手がける。近年の主な展覧会に2015年「Field Research: A Progress Report」(ガレージ現代美術館、モスクワ)他。テート・モダン(ロンドン)、パリ市近代美術館、MoMA PS1(ニューヨーク)、ドクメンタ(ドイツ)、ヴェニス・ビエンナーレ、光州ビエンナーレ(韓国)、上海ビエンナーレ、イスタンブール・ビエンナーレ(トルコ)、リヨン・ビエンナーレ(フランス)、オカヤマ・アート・サミット(岡山)など、数多くの国際展にも参加。

レクチャー|
乗松亨平(近代ロシア文学・思想/東京大学准教授)
1975年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。専門は近代ロシア文学・思想。著書に『リアリズムの条件 ロシア近代文学の成立と植民地表象』(水声社)、『ロシアあるいは対立の亡霊 「第二世界」のポストモダン』(講談社選書メチエ)、訳書にヤンポリスキー『デーモンと迷宮 ダイアグラム・デフォルメ・ミメーシス』、『隠喩・神話・事実性 ミハイル・ヤンポリスキー日本講演集』(いずれも水声社、共訳)など。


主催|AMSEA(東京大学|社会を指向する芸術のためのアートマネジメント育成事業) 2019年度 文化庁 大学における文化芸術推進事業
協力|倉敷芸術科学大学芸術学部 川上幸之介研究室/EEE Program http://www.kuragei.com



問い合わせ|AMSEA事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学大学院情報学環 北田研究室
メール:amseaut@gmail.com